時の抜け穴
殿岡秀秋

午後三時のおやつの後で
時の抜け穴から
入っていくときに
ぼくは二つにわかれる
もうひとりのぼくは
庭に作る仮装の舞台に立つ
そこで主役を務める
普段のぼくより
威勢がいい

ストーリーは
小学生のぼくが
庭に面した縁側に座りながら作る
花や木がおぼろにゆれると
主役を演じるもう一人のぼくが
無敵の活躍をする
戦国時代に生きていて
一国一城の主になる

そんな気分は現実では味わえない
しかし
役者の時間を終わりにしなければ
ご飯が食べられない
明日学校にいくために
宿題もしなければならない

抜け穴から戻ると
夕暮れになっている
ぼくとぼくが一つになるための
身震いをしてから
家の中にはいる



自由詩 時の抜け穴 Copyright 殿岡秀秋 2013-03-15 06:06:55
notebook Home 戻る