風車の影
Lucy


巨大な風車の影が
枯れた笹原と採石場と
牛舎の上を繰り返し通り過ぎて行く
くねくねと形を歪めながら

くねくねと
大地の歪みをなぞり
絶え間なく地を這う影は
まるでコトバ
人の心のくぼみに沿って
形を変える

くねくねと
正しい人の心の形は
正しいかたち
悪いのはいつも他の人達

ええ、あたしは言ってあげたのよ
言うべきことはいつもはっきり
その人に面と向かって言うことにしてるもの
あたしはいつも正直で
悪気なんていっこもないの

それをあの人たちは
誤解して

本人に直接伝えるべきでしょう
陰で言うなんて正しくない
だから伝えてあげたのよ代わりに
ちゃんと話した方がいいって
それなのに
あの人ったらそんな事
言った覚えはないというの
そうよ、裏切ったのはあの人なのに
まるであたしが悪者にされたのよ

ぽっかりあいた底なしの暗闇
の小さな出入り口のよう
あなたの口は笑顔の中で動いてる

ただ一点の曇りもなく
自分を正しい人と信じて
疑わない

何を言ってもあなたの頭は
ブラックホールのように
どんな言葉も呑み込んでしまうのだろう

中途半端な笑顔を貼り付け
半開きのまま何も言えずに
あなたの話をただ聞いている
私の口もブラックホール

あなたと私の地表をなぞり
くねくねと
コトバが素通りしていく





自由詩 風車の影 Copyright Lucy 2013-03-13 21:15:21
notebook Home 戻る  過去 未来