海に捧げる四つの断章
赤青黄

?


漣の壊れた
三月の浜辺



カモメの死体が、





海岸線を歩く

足跡を残しながら


振り返る
消えている足跡


波にさらわれる軌跡
足跡

カモメもまた
さらわれて




海岸線を歩く


壊れかけた漣の隙間から
白い鳥の羽が覗く


ここは三月の海



?


視力を亡くした少女が
海に行きたいと
急に願った

から
私達は少女を
冬の海につれていった


彼女海の音を聞いていた
少女の右手を繋いでいるのは

少女の弟だった

「何が聞こえるの?」
「風の音、それから海の匂い」
「何か見える?」
「少しだけ」
「何が?」
「何か」



?


私の家は海から少しだけ離れている

私の家は高台に建っている訳ではない

私の家の二階からは海が少しだけ見える

割れた窓ガラスの間から海が見える

窓ガラスは割れたまま、放置したまま

埃が窓ガラスの断面に降り積もっている

私の家は海から少しだけ離れている



?


海が聞こえる


貝殻で焚き火を囲んで

小さく花火をしていると


海が聞こえてくる


線香花火が揺れ動く
赤い砂浜と

黒い海の間で揺れる
青い波


海が聞こえる


星が眩しい


海が聞こえる

星から歌が

海が聞こえてくる


忘れかけている


海が語りかけてきて


私は火を消して夜を眺める


なくなりかけている


海がきこえてくる


海が





自由詩 海に捧げる四つの断章 Copyright 赤青黄 2013-03-12 19:37:21
notebook Home