独善
村正
悲しむことはなく
笑えない理由もない
日常は途切れない
そしてだれかが途絶える
憎むべき人はなく
笑えない理由もない
日常は途切れない
もしもだれかが途絶えても
今あるものだけを愛せるほど
器用になれる理由もない
記憶は途切れない
いつか俺が途絶えるまで
見知った墓の量と
途絶える恐怖の大きさが
反比例していくから
憂うことはない
なにもいらない
だれかいてくれ
無常を想っても
日常は途切れない
引きずり出された
灰色になっていく
俺たちの道のりは寄り添うだけだった
右隣の呼吸を思い出しては
やかましい夜を
どうやって越えようか