おれはヒトゴロシにはなれなかった
ホロウ・シカエルボク






こういうの書いてなかったら
おれはたぶんヒトゴロシになってたさ
気に入らねえやつらみんな
徹底的にヤッちまうヒトゴロシになってたさ
おまえがおれと目を合わせれば
おれはありもしない悪意を読み取るぜ
そのままなにか仕掛けてくるようなら
腐った柿みたいになるまで顔面をブチのめすぜ
ホントはそういう人間なのさ
湧き上がるものを堪えられないのさ
鎮める術を見つけられなかったら
きっといまごろ監獄の中だったろうな
夜通し積もりに積もった幻覚に騒いで
牢屋番にしこたま殴られてくたばってたかもな
渦巻くものをねじ伏せて黙らせる
そんな手段が必要だったんだ
自分のやりたいことははっきりしていたさ
ヒトゴロシにならなくてもいいなにか強烈なこと
ヒトゴロシにならなくてもいいなにか懸命なこと
自分のキチガイとうまく折り合いをつけて
涼しい顔で街を歩くための方法
聖人君子になるために
こんなことやってるわけじゃないのさ
そんなことやってるやつらのおめでたさなんか理解出来ねえ
ハンドルの壊れた疾走するバイクの前輪蹴飛ばして方向を変えるような真似をやり続けてきたんだ
しくじったらどっかに激突して一巻の終わりさ
だから面倒な話をおれに持ち込むなよ
しょうもないアクションでおれの足を止めようとするなよ
次のカーブがどう曲がるのか見極めなくちゃならないんだ
止まることがまだ許されないから
そうして走っているしかテがないのさ
もしもおれの邪魔をするってんなら
おれはヒトゴロシになるかもしれないぜ
ヒトゴロシになって
おまえのことをヤッちまうかもしれないぜ
余計なことはしてくれるな
おれはおれでやってくしかない
こいつをねじ伏せながらやっていくしかない
おれはヒトゴロシなんかになりたくない
だから油断させないでくれよ
だから邪魔はしてくれるなよ
常に気をつけてなくちゃならないことなんだ
常にバランスを取ってなくちゃいけないことなんだ
おれはおれなりのまともさを
まともさを追求して生きて行くのさ
たとえばそれに誰かが納得出来なかったとしても
それはおれの問題じゃない
そいつ自身のなにかしらの問題なのさ
ひとは他人になれたりはしないんだ
共通言語なんか少ないほうがアタリマエってもんだ
そういうことが判らないやつらがヒトゴロシになったりするのさ
少しは判っているこのおれは
だからこんな時間にこんなものを
液晶画面をテカテカ叩いて書いてやがるのさ
判るかい
エンジンの掛け方さえ見抜くことが出来たら
壊れた車でもなんとか前に進むぐらいは出来るのさ
さあ
道の先が見えてくるころだ





自由詩 おれはヒトゴロシにはなれなかった Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-03-11 00:57:34
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