ひかり ゆくえ
木立 悟





ひとつの鏡
三つの姿
耳の真上を
すぎてゆく花


つなわたりの月
心に削られ
かけらは降り
夜は
夜ではないかのように


水を昇り 黒は暴れ
さらに高く連れ去られてゆく
名前を記す間も無いままに
花はただただ降りそそぐ


明るい光が砂に触れ
光も砂も互いを忘れる
海を覆い 空を呑み
再び沈む打楽器の群れ


浜を照らす雷雲
音は何処にも無いかのように無い
遠い波
最も空に近く
見る者も無く


雨が夜を割り
水は増えずに散らばる
窓際に点る灯
粉の鐘を鳴らす



うたは冬を呑んだ
応えは無かった
壁に 紙に
涙を吐いた



街が静かにやわらかくなり
翳りの筒が内を行き交い
光は嵐を引き寄せる
見わたすかぎり瓦礫の丘


祝福の無さ
喉の痛み
夢のなかの数百年
いつのまにか
雨は遠い


人のものではない明かりがそそぎ
緑は白と黒に近づき
街と原の境を喰らう
虫が羽音を思い出せぬ間に


煙を貫く虹の端々
追っても追っても遠去かる影
まぶしさは静けさに何も言わず
行方をひとつ手わたしてゆく































自由詩 ひかり ゆくえ Copyright 木立 悟 2013-03-10 10:37:54
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