銀の棒
砂木

晴れた日 銀の洗濯棒は陽射しに熱され
光を宿し 立ち尽くしている
光を受けない所は 銀棒のまま
横にかけられた 渡し棒とまかれた鎖を支える

重しにはめこまれ 土の上に立つ洗濯棒
洗濯物が 横棒の鎖にかけられたハンガーごと
パタパタと 草や木の葉と共に揺れる

風が吹き込み 棒の前の水面が揺れる
ゆすられた水面に写る 棒も洗濯物も
水の波紋の形と交ざり おどけ

水面で 銀の棒は光と影でできた一本の杖
鎖や ハンガーと共に揺れながら 洗濯物は
服になる前の 染めた手と糸のはじまりの歌を
色文字のように 波と共に語る

強くなった風に つぶてとなって飛んだ水滴が
水に落ちながら 風を乗せる
熱した風は 水滴を蒸発させ 連れて吹き上がる

乾いた服を取り入れ 晴れた日は終わり
水面には 光と影だけが残る
やがて陽も暮れ 夜がはじまり
水面も 写るものも 暗く見えにくくなる

冷えた銀棒に 夜風が止む
冷やされて 止められて
ひとしずくの 水滴になり
やがて棒の足元に 闇を写してたまる






自由詩 銀の棒 Copyright 砂木 2013-03-10 10:20:51
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