箱庭 六晩目 〜惠み〜
黒ヱ

〜隣にいる 可愛げなお妃様のお話〜

薄く掌の温度 撫でる
紅く火照る頬 触れたいよ

水際で待っている その間が余暇となり
淡く 互いを焦らす
「それでも」
彼は言う 
「果たして暇とは何だろう」
舟に乗り 会いに行くさ
「あなたとなら その間に 何か価値を見出せる気がするから」
ずっと 待っている

夜から日差しが割れるが如く
届く 咲く蕾は綺麗
満天の星すらも 晴らしてしまう
「あなたがいい」

指切りしよう 指切りげんまん
終に 辿りつこうとする二人は 
また 新しい門出を探す
何度も 何度でも
「あなたには 桜が似合いますよ」
愛して 愛されて 
弧の先には 日の指す道が続いている
共に 行こう

腐りきったこの世界で見つけた
からたちの花

また 水面が近くなった頃
「そうさ 行くさ すぐに行くから」
聞こえぬ 今まで達の欠片の音
「行こう 進もう」
もう この眼は一つのものしか見えない

手を繋いで 指切りげんまん
終わりなど見えない 遠くの夜空
咲き誇り それでもなお咲きたる花
それぞれの生きた証として
「この契りを あなたと挙げたい」
愛して 愛されて
鳴り止もうとしない鳥達 賛美の音が聞こえる
その存在の全てを 染め上げるまで

綴り終らぬ 物語の最中
「今までも そうだったのだから
 これからも きっとそうなのだ」
辿り着いた 約束の二人 指切りげんまん
いつでも二人は二人を 愛している

「愛している!」

指切りげんまん
いつの間にか結ばれていた
互いを繋いでいてくれる その糸は
ほら 赤い色をしている


自由詩 箱庭 六晩目 〜惠み〜 Copyright 黒ヱ 2013-03-09 05:29:07
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