「しののめはあなたのなかのまるい眠りに棲む」
キキ
いまはただ
雨が降り
石にしみるまま
あけないおくで翳のかたちを追っている
ひがしの空だけが
ゆるやかに
くちびるをひらき
すきまから虹彩をのぞむ
わたしは
まるい眠りを
かきわけてゆくなかで
おもう
雨の泡沫
栞をはさんだ
あのページには
「すん」
とあなたが繊維をまいた明るい翳り
そしてわたしのなかにも
足跡ひとつを
しみ残し、
あかつき
ただ、ただ
と
歌えば いい
今日
あなたが
なにものであろうとするのかは
朝食のあとに
決めてもいい
今日
わたしが
りんかくを持てる日なら
被膜になりたい
目覚めのわるいこのまぶたの名は
あかつき
わたしは
しののめ
指を差したほうから
ひともけものもやってきて
わたしの子宮をたたく
「枯れない」
そう
泡沫は雨だったのだから