レンタル・フィロソフィー
村正
指針を欲しがっている
根を張った知識をえぐる
本であふれかえった戦場で
今日も血は流れない
天才と狂人の言葉を
おそろいに犯された
こどもたちが借りる
教授の首だけをみている
知るすべを求めるのは
わかりそうにないことだけ
脅迫はおさまらない
善に触れる指が乾いた
遠ざかっていく
お前のことばではない
真理は美しい
続かない傍観
えらそうな本を閉じた
白いノートだけ抱える
返さなくていいと囁かれた
勘違いの午後に
*
小さな駅のなつかしさ
夕暮れのセンチメンタル
赤い空に生きている
知らない鳥の群れ
美しい、が真理で
思想を閉ざす
「返さなくてもいい」と
彼は苦笑いするのだろう
意味から離れては
揺れる心を愛している