幻影(まぼろし)
未有花
芳しい薔薇をあなたにあげると
差しのべられた手をつかんだのがそもそもの間違い
やがて薔薇は枯れてしまい
私がつかんだものは幻だと知らされる
私が愛したあなたはもうどこにもいない
恋は幻影
いつだって偽りの言葉に私は惑わされる
永遠を夢見て夢中になるけれど
冷めれば愛は知らん顔で私はいつも途方に暮れる
愛は幻影
赤い糸はしょせんおとぎ話に過ぎない
運命の相手に思えたあなたでさえ
今ではすっかり仮面がはがれてまるで別人のよう
できれば最後まで仮面を被っていて欲しかった
偽りの愛でもいい
いつまでも私をだましていて欲しかった
恋は幻影
そう知りながらも私は今日も恋に恋をする
一輪の薔薇をあなたが差し出すのを
偽りの言葉をあなたがささやくのを待っている
愛は幻影
今夜も冷たいあなたの隣で背を向けて眠る
だまされた振りを演じ続けながら
別の誰かと恋に落ちる夢を見る