the spring in Tchaikovsky violin concerto op.35
月乃助
風のなか
春を期す
ヴァイオリンの音が澄みわたる
重い冬の(に)
戸をおおきく 開けひろげ
はしり出す
雪が 光がはねるそのただなかへ
空はなまり色を置き去り
幼な子たちが、心はずませ色をさがす遊びのように
森の活きづきはじめた 春を迎える
第一楽章
ツツジの芽は、つぼみを弛め
雪うさぎは、耳を欹てた
寝床の熊は、目覚めの大あくび
小鳥たちは、stage frightに声をふるわせ
もう誰も じっとしてはいられないのです
第二楽章
止める術をしらぬ
季節の移ろい
冬の兵士たちばかり敗残の
厳しさを肩にする背嚢にしまいこみ
重い足取りで去ってゆく
装てんされた氷柱の銃は、
すでに溶けるにまかせ
擦り切れたコ‐トを引き摺っていく
小川の道を
白い犬が走りぬける
村人のだれもが 扉のすきまを伺う第三楽章
風の香りをたしかめれば
足をふみだし
春の訪れに
陽気なわらい声
森は踊りにつどい 輪を描き
空さえも喜びのあたたかな 色をそえる
散りまどう光砂糖は、
snow dust
待ちわびた 生けるものの心を甘くする
春のあかし
すべては、
春の風にさわぐ
協奏曲の森の
調べ
自由詩 the spring in Tchaikovsky violin concerto op.35
Copyright 月乃助 2013-03-01 20:37:51
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