時の高速回転機
殿岡秀秋

時は切れ目のない波
凪いだ海の
ゆるやかなうねりのいただきの
光るところから
暗い窪みまで
隈なく見つめていた
幼い日

小学校でいやなことがあると
深くうねる波の底に下って
浮かびあがるまでが
長く感じられる
なかなか放課後にならないで
心臓だけが早鐘を鳴らす

時の流れを淀ませて
ぼくは淵を作り
大きな動力で回す
渦に吸い込まれると
すぐに大人になるための
時の高速回転が始まる

電気洗濯機のような水流に揉まれてから
ベランダに干されると
からだが大きく膨らむ
乾いたら
学校は卒業していて
酒を飲んで
恋人ができて
遊んでいればいい
ぼくは大きくなったからだで走りだす



自由詩 時の高速回転機 Copyright 殿岡秀秋 2013-03-01 05:43:37
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