ことばよりさきに
凍湖(とおこ)

ことばよりさきに
脱ぎ去れない肉体を持って
取り乱す
見上げれば
木漏れ日が
からだを斑に染め
赤と緑に、網膜が灼ける

わたしは、うまれてしまったのだ
あかくふよふよと浮かんでいた、胎児の時代は遠く
皮膚は黄金色に焼け、骨もたくましく伸びた

本を読み
インターネットを介し
さまざまな、他者の断片に触れる

しかし
肉体は、わたしを引きとめる
ここに、どこでもないこのばしょに、「あなた」の前に
なによりも先に
10センチ向こうの
息遣いの前に、対峙する

逃げ出せない鼓動
生身が鋭く、痛むとき
いきている、いきている
ことばよりさきに
わたしは、いきている


自由詩 ことばよりさきに Copyright 凍湖(とおこ) 2013-02-25 12:40:09
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