紙飛行機
茅野ゆき

地図は自由だ
どこへも行けない僕よりも
世界を知っている

時々
どうしようもなく泣きそうで
どうしようもなく苦しくて
息が詰まりそうになる
そんな時
地図を広げて眺めるんだ
自分が生きていない時間
けれど同時に過ぎていく世界を
感じることが出来る気がして

だけどけして
僕は僕の世界から動けない
動く勇気もない

背の高いビルの屋上
空が近くて
街が広く見渡せる
知らない世界が、ほんの少しだけ
この掌の中にあるようで

開いた地図を、折り畳む
世界が内側に沈んでいく
悲しさよりも期待を込めて
紙飛行機を折った

どうか僕のかわりに
世界を見てきてくれないか
大丈夫
君は道を知っているだろう
迷わずに、真っ直ぐ
空から世界を見渡してきてくれないか

軽く投げた紙飛行機は
空の青に溶け込むように消えていく

遠く、遠く


遠く、遠く


自由詩 紙飛行機 Copyright 茅野ゆき 2013-02-22 23:12:49
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