星雲シロップ
aria28thmoon


「アイスコーヒーにシロップいれるとき、なんか綺麗だよね」
「……ごめん、わかんない。っていうか、その、」
「あ、マスミちゃん、シロップなんかつかわないか」
「うん」
「オトナだねぇ」
「そんなんじゃないよ、好みの問題」
「でも、ほんと、綺麗なんだよ」
「シオリちゃんが云うなら、綺麗なんだろうね」
「えへへ」

夏の暑い夜だった。
昼間のそんなおしゃべりをふと思い出して、
アイスコーヒーにシロップをいれてみる。

ゆらゆらと広がるそれは、
いつだったかテレビで観た、星雲のようだった。

空を見上げる。
たっぷりとした紺青。
その遥か彼方に、
ゆらゆらと広がるシロップのようなそれが
たゆたっているのだ。

グラスに口をつけると、
あまい という感覚がまた、
星雲のようにゆらゆらと、
口のなかを広がった。


自由詩 星雲シロップ Copyright aria28thmoon 2013-02-21 18:19:17
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