雨水(うすい)
nonya


光が次の
季節を連れてくる
風はそれを
押し戻そうとする
雨が次の
季節を置いていく
人はそれを
なかなか見つけ出せない

ひと雨ごとに
行きつ戻りつしながら
季節は摺り足で
ゆっくりと前へ進む

ひと雨ごとに
立ち竦んでしまう心には
凍てついたしこりが
いくつも出来たままだけれど

ちょっとした素振りから
垣間見えてしまった
その人の本音や

ちょっとした冗談のふりをして
背中につきつけられた
その人の悪意は

むりやり解凍せずに
そのままにしておこう

やがて
柔らかい雨が何度も降って
つまらないわだかまりが
少しずつ溶け出して

やがて
お節介な雨が何度も降って
とるにたらないこだわりを
せせらぎに変えていったら

せせらぎが辿る岸辺には
ささやかな花が
咲いていれば良い

せせらぎを笑う光が
正真正銘の
春であれば良い




自由詩 雨水(うすい) Copyright nonya 2013-02-19 18:42:21
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