窓際の猫
……とある蛙

閉め切った部屋の窓硝子の温度差
水滴によって曇っている硝子表面
外界の寒さと此処は無縁の筈だが
独り曇った硝子窓を見つめている自分は
一匹の黒猫だ

雌なのか雄なのか去勢されてから
噸(とん)と興味が無い
同居人が勝手に呼ぶ名前があるが
どうでもよい
同居人は何時だって人間なのだが
どうも野良だった時分の
記憶が忘れ去られ
此処の部屋に連れて来られてから
ずっと時間が無い

夏も冬もなく
まして秋も春もない。
ただ窓硝子から見える花が
黄色から赤に変わり
花がない季節がきて
たまに白い物が降る
停止した季節が流れる

同居人は気が向くと
抱きしめるのだが
嫌とも言えず付き合ってやる
これも義理って奴だ。
余りしつこいと逃げ出すが

窓硝子を眺めるのが飽きれば
タンスの上のベッドで
午睡ウッツラウッツラ夢のなか

夢の中では
黒猫を飼っている自分がいて
結構面倒だななどと思っている。
猫砂の掃除
餌やり、運動も兼ねた遊び
その割には飼い猫は冷たい素振り
イラッとしながらも
カリカリを掌に名前を呼んだりする
飼い猫も忘れたころ
ゴロゴロ首や尻尾をすりつけてくる

というところで目が覚めた
うっすら開けた眼の先
相変わらずタンスの上から
同居人の夫婦を見ている。

少し愛想良くしてやろうか
あいつらがイラッとしないうちに


自由詩 窓際の猫 Copyright ……とある蛙 2013-02-19 16:29:01
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