たばこの看板
灰泥軽茶

おおらかでよく笑い
どこを見ているのかわからない優しい女性のように
いつもどこかで遠くからでもわかるように
こちらかあちらを向いてじっと佇んでいます

知らない街を心細く歩いていても
いつもと同じような
ちょっと違う笑みをたたえてじっと佇んでいます
そんなとき私はちょっとどきっとして安心します

前住んでいた街を偶然通り抜けるときは
まだいるんだろうかなと
わくわくしちらり
そしてちょっとほっとします

もうたばこ屋さんなんて
とっくの昔に潰れているのに
錆び錆びの擦れ擦れで
ちょっと寂しそうに笑っています

そんなとき私はたばこの看板なんて
街中に溢れているけれど
そのなかには時が経つにつれて
表情や意思を持ちはじめて
本来の目的を忘れられて街に溶け込み
だれかの心にも溶け込んでいくのじゃないのかなと想い
街を歩けば
心のどこかでたばこの看板を探しています



自由詩 たばこの看板 Copyright 灰泥軽茶 2013-02-19 01:05:13
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