半島の午後を
梅昆布茶

そのジャケットにはかもめが飛んでいた

水晶の静寂が永遠の砂から響いて

僕の胸ポケットの中には人生の請求書しかなかったのだけれど


静謐がほしかったそれ以上に孤独が

体のすべての細胞が冷え切って宇宙の温もりを懐かしんでいた


かもめは彷徨の象徴で

河口ちかくには南風がわずかに吹いていたかもしれない


僕はあの半島の午後を好んで歩いた

軽いリュックの重みを感じながら雲の影を追って


麦畑の金色の揺らぎに隔離された自由を感じていた


灯台への道はなだらかな半島を縫うようにして

手招いていたっけ


ワーグナーのローエングリンのように

或いはフォーレの

亡き王女のためのパヴァーヌが聴こえる

半島を渡る風はときおり雲を散らせ


僕はふと立ち止まって足もとの雲の影を見つめるのだ

そしてまたゆっくりと歩き始めるのです

僕の足を止めた雲と風と

永遠のために

ちょっと振り返って見たのです


そしてまた歩き始めるのです


この半島の午後を














自由詩 半島の午後を Copyright 梅昆布茶 2013-02-17 22:12:54
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