半島の午後を
梅昆布茶
そのジャケットにはかもめが飛んでいた
水晶の静寂が永遠の砂から響いて
僕の胸ポケットの中には人生の請求書しかなかったのだけれど
静謐がほしかったそれ以上に孤独が
体のすべての細胞が冷え切って宇宙の温もりを懐かしんでいた
かもめは彷徨の象徴で
河口ちかくには南風がわずかに吹いていたかもしれない
僕はあの半島の午後を好んで歩いた
軽いリュックの重みを感じながら雲の影を追って
麦畑の金色の揺らぎに隔離された自由を感じていた
灯台への道はなだらかな半島を縫うようにして
手招いていたっけ
ワーグナーのローエングリンのように
或いはフォーレの
亡き王女のためのパヴァーヌが聴こえる
半島を渡る風はときおり雲を散らせ
僕はふと立ち止まって足もとの雲の影を見つめるのだ
そしてまたゆっくりと歩き始めるのです
僕の足を止めた雲と風と
永遠のために
ちょっと振り返って見たのです
そしてまた歩き始めるのです
この半島の午後を