さえずるくま
黒髪

自分の正しさをなくした、小鳥は
さえずる声も弱々しく森の中にいる。
くまが冬眠から目覚めたのを見て
おはようの挨拶をかけるため近づいていく。
「俺の失くした鳴き声、あんたは最後に聞いたよな?」
くまは久しぶりに外に出て、最後の記憶を探っている。
そして、答えを見つけたくまは、自分のいない間に正しさを疑ってしまった小鳥のために、
「でも、今日生きているのだから、失くした鳴き声と一緒に生きるんだよ」
と慰めた。
小鳥は頭を巡らして、かすれた鳴き声に、自らの過ちを何度も思い返す。
つついて殺したミミズの垂らした体液や、自らを通すため追い返したオス、
放蕩にふけって、親の顔すら忘れたこと、暗いことばかり、森の中は暗い。
樹上の空は限りなく高く、覆い尽くすような明るさで、呼ぶと思った鳥は、
風に乗って急上昇すると、失くした正しさを求めて旅立った。
声を失っても翼があるさ、とくまは思ったのだ。


自由詩 さえずるくま Copyright 黒髪 2013-02-16 22:29:50
notebook Home 戻る