冬の蛍
イナエ

ベランダに出る
たばこを取り出す
火を付ける
煙を吐いて見上げた空

ぼんやり白い雲
切れ間に
オリオンの三つ星が
行儀良く並んでいる

カーテンから漏れる居間の光が
隣の家の壁に映り
濃淡を不定期に繰り返す光と
一緒に妻や子どもの
笑い声が登ってくる

いくつかの屋根の果てに
蛍が一匹灯り点滅させている
光の信号を送ってみるが
定期的に繰り返される瞬きは
乱れることなく

やがて
すーと消えて
屋根の谷間は
闇に飲まれる

も一度オリオンを
眺める眼に
寒さが刺さり…


自由詩 冬の蛍 Copyright イナエ 2013-02-14 17:57:21
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