誰も 誰も
木立 悟
けだものがけだものをほどき
同じけだものを編もうとするが
うまくいかず
やがて 泣き出してしまう
見向きもされないものを負い
どんどん重くなるばかり
進めなくなり
雪に埋もれる
鼻から上の失い微笑みの巨人が
建物の内を歩いている
ゆうるりと無音に
共存する
むらさきの花の手が目を覆い
街から人だけが見えなくなり
径はこがね
雪はこがね
埋もれたものを抱き上げ
門をくぐる間に
青は別の青に変わっている
さらにむこうの門 むこうの空
明日の太陽の幻が
幸福のない幸福のように浮かんでいる
夜の凪を照らす鳥
双つの星を背負っている
曲がり角の灯の下で
けだものはけだものを編みつづけ
誰もいない径の先
誰もいない径はつづいてゆく