ましや山荘
かかり



私は目覚めていた

誰もかもが寝てしまったあと

ほとんど闇に近い暗がりの中で

妹の寝息と父のいびきが重なったり交互になったりするのを気にしたり

どこかから聞こえてくる秒針の音源を

仰向けのまま探ったりしていた



窓の外に何かの気配を感じたとき

おそらく0時をまわっていただろう

眠らなければならない私は

家族から取り残され

禁断の森にいるような気持ちになった

たしかに外は木々に囲まれている

ひと一人いないはずの森にぽつんと

この山荘はあるのだ



部屋の天井を見つめていた私は目を閉じ

真っ黒な森の木々の間にある瞳から

山荘を見つめる何ものかになってみた



電灯の消えた窓

四人の家族

穏やかないびき

かすかな寝息

そして

研ぎ澄まされた時を刻む秒針



暗闇から望む小さな窓のなかで

眠れずにいる子供などは

気づくにも及ばない

ささいなものだった


 


自由詩 ましや山荘 Copyright かかり 2013-02-10 23:02:50
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