もう一度
文字綴り屋 ひじり

俺の中に奴がいる
どれほど嫌って憎んだろうか
私の中にあの人がいる
どれほど悩み苦しんだろうか

苦虫を潰したような表情で俺を見た奴
深い溜息をしては私から目を逸らしたあの人

何もかも叩きのめしたいほどに怒りが膨れ上がる
大声で所構わず泣き叫びたいほどに悲しみが膨れ上がる

それなのに今さら奴は
涙を堪えながら俺を抱きしめるのか
それなのに今さらあの人は
嗚咽しながら私を抱きしめるのか

すまないという言葉も
愛してるという言葉も
今の俺の心に届くと思っているのか
ごめんねという言葉も
愛してるという言葉も
今の私の心に伝わると思っているのか

何と言う卑怯さだ
何と言う傲慢さだ

だのに
だのに
俺は泣いている
だのに
だのに
私は泣いている

それは俺の中に奴がいるから
それは私の中にあの人がいるから

記憶の彼方の
俺を肩車してくれた思い出が
記憶の片隅の
私の頭を撫でてくれた思い出が
俺の中の憎しみを
私の中の悲しみを
解放の激流へと導いていく

幼かったあの頃に戻って
もう一度 呼んでいいですか
お父さんと
幼かったあの頃のように
もう一度 呼んでいいですか
お母さんと



自由詩 もう一度 Copyright 文字綴り屋 ひじり 2013-02-08 20:25:51
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