予防線
村正

空が白むのを眺めている


朝より早く夜が終わる


どこかにひとりでいる君


目覚ましはもうない




諦めの塔の頂上の


はがれかけの立て札


同じ感性たちのルールで汚れた


ノートには確認できる




螺旋階段を這い上がると


夜が静かに下りはじめた


もたつく月の溜め息


くらくて目を閉じた




指で囲んだ足元がかすむ


壁の向こうは見えていた


太陽が上る前に彼が戻ったら


どうか叱らないであげてほしい


あの砂漠がまぶしくても


目は開けたまま


輪郭をなぞれなくなったとしても


悲しむことはない




欲しがらなかったのは


欲しいままだったから




ニヒリズムを畳んで懐にしまう


円が線になって


ゆるやかな月が滑り出すから


虹の中で地球儀を回す




誇れる記憶をおぼえては


たくさんの線を弔う


欲しがらなかったのは


欲しがらなかったのは




幼さを許せそうな夜


大嫌いな世界は


ようやく暴かれた


夜が明けるよ


心臓の


奥で


クチナシの花がゆれる


ゆれている


自由詩 予防線 Copyright 村正 2013-02-08 07:10:44
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