ソーダ水
中川達矢

デパートの屋上で
メロンソーダ、いや、
クリームソーダ
そのこぼれおちた泡が、水槽の海を知らせる
午前零時、
マッチの先は折れていた
極限の闇は、明けていく、
午前一時、
柱時計は壁から、鐘をひとつ鳴らして揺れる
六畳間が、六畳間が、大変です、六畳間が、
メロンソーダ、いや、
クリームソーダの泡で
午前二時になっていく頃
もういい加減、眠って
口から出た泡が
午前八時
跡形もなく、唇に残ったように
昨日と繋がっている今日が
背中にくっついて、あとを追っかける
午前九時
メロンソーダの緑を
瞳孔に残したまま、家を出る
クリームソーダの泡は、
デパートの屋上の水槽の海で
餌食になっていた。


自由詩 ソーダ水 Copyright 中川達矢 2013-02-07 00:27:43
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