羅列
川上凌



難しい言葉を並べるのだけが詩ではない
と陽だまりに抱かれたばあちゃんが言った

ちょうど春の終わり頃
小学校で書いた詩を先生に褒められたあとだった

知っている言葉をずらずらと
それらしく並べただけの
今思えば陳腐な感じの詩であった

またその頃
知っている言葉をずらずらと並べれば
大人はそれなりに褒めることも知っていた

いわばどれだけ分かりやすく
相手の心に留めるかが 勝負なのだ、とも
ばあちゃんは言った

やってみればそれは
難しい言葉を並べるよりも
遥かに難しいことである

またそんな詩を書けるようになりたいと
思っているうちに
いろいろな詩と出会った

教科書にのっている詩も有名な詩人の書いた詩も
どれもこれも全て
分かりやすくて心に留まるものだった

難しい言葉を並べるだけの詩は
簡単であると同時に
言葉さえ知っていれば誰でも産めるものだった

陽だまりのなかでばあちゃんが言った
心に留まる詩はまだ産めない


誰かの心に留まるように言葉の羅列を
わたしの身体中から必死で拾い集めて
言葉を紡ぐ

いつかじぶんの為にある詩ではなく
だれかの為だといえる詩を書くために





自由詩 羅列 Copyright 川上凌 2013-02-05 19:26:20
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