崩壊としゃぼん玉
シホ.N



言葉は
意識にあやつられるのではなく
無意識のなかに生きていた。

わたしがわたしそのものである
…とはいえない。

わたしは、エンピツではなく
たばこではなく
雪ではなく
あの人ではなく
それらとの差異のみがようやく
わたしがわたしであるらしい、と。

いや、あるらしい、
といえるほどにさえ確実性はなく
かもしれない、
ともいえるかどうか。

世界が壊れるかという一瞬に
世界は壊れずに風が吹いて
無数のしゃぼん玉が夜空に舞った。
わたしたちは息をのんだあと歓声をあげ
拡散していくしゃぼん玉に見いっていた。

死の恐怖は、
あいかわらずわたしのなかに
潜んでいるのでしょう。
しかしわたしは、
死を望んだときの自分を客観視することができず
もう、
死をどうとらえていいかわからない。

世界が壊れる一瞬に
しゃぼん玉が舞ったのは
あざやかなフェイントで
不安と
死の恐怖と
尋常でない空気が
とたんに溶け出すのを感じた。


自由詩 崩壊としゃぼん玉 Copyright シホ.N 2013-02-04 17:14:55
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