問いかけ
草野春心



  きみはぼくに
  ただ一言の問いかけをした



  夏、
  夕暮れのきつい光が
  少しだけ漏れる部屋で
  きみはぼくに問いかけをした
  どんな手がかりも
  どんな秘密もない、
  白くて硬い問いかけだった
  小さな丸いテーブル
  灰皿のなかで煙草は燃え
  ぬるい風は時間をがりがり削り取り
  誰かが何処かで服を脱ぎ、
  ふたたび身に着けるときのような
  かすかな気配がして



  きみはぼくに問いかけをした
  ぼくは、
  なにひとつきみに問わなかった
  夏の夕暮れがテーブルから
  鮮やかな色を奪って
  部屋の床に叩きつけた
  強く、
  強く、だけど
  かなしいぐらいしずかに




自由詩 問いかけ Copyright 草野春心 2013-02-03 22:15:42
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