頭痛薬の処方の仕方を間違うと頭が半分個になっちゃうぞ
赤青黄
目覚まし時計のアラーム機能
が昨日からずっとリピート
ビービー五月蝿いたら
ありゃしない
右手で十回
左手で二十回
枕元のスピーカーから
あふれ出るノイズは
涙の漣
及び
イルカの鳴き声
によって構成されていた
大人用の頭痛薬を
半分個
そうすれば子供に処方しても大丈夫なのです
頭痛が無数の木の葉となって
脳内で巻き上がる
そのイメージがとまらない
木の葉はやがて一枚の新聞紙となり
その新聞紙の一面記事には
「あ」の失踪と
いう題
以外みんなあの文字しかない
そんな記事がのっていて
僕は少しだけ
気がおかしくなって
笑ってしまった できたてのこーひーはもう
冷えてしまった
急いで洗面所に行き
胃に詰まった諸々を吐き出そうとする
だが
いくら吐けども
出てくるのはこーひーと
濁ったお茶ばかりで
肝心のものが出てこない
先ほど吸収した「あ」は
「は」となり笑いとなって
鼻空を突き抜けて大気で抹殺されるのに
なぜこうも頭痛薬は僕の頭をイタくする
「やめてくれやめてくれああやめてくれ」
「ぼくをころさないでくれははやめろ!」
吐きながら訴えをやめない僕の胃は
洪水を通り越した火砕流レヴェルの勢いを持つ
胃液でもって薬を溶かそうと躍起になっていた
こーひーはドブの中
頭痛薬は頭痛を起こすから
頭痛薬、これってこじつけ
なのは分かってるけど
分かってるからやめなれないのよ
きゃは
目覚まし時計のアラーム機能
が一昨日からずっとリピート
ビービーも慣れてしまうと
なぜか心地よい
処方箋の使い方を僕はよく読んだことが無かったけれど
今日からは服用する前に一度かならず
読むようになった
一字一句丁寧にその薬の使い方を確認したあと
コップ一杯の水で合計十種類の薬を飲むことは
べつに苦しくともなんともない
ただ
その後の頭痛が怖いから
僕は何度も文字が擦り切れてぐちゃぐちゃになって
紙の端っこが僕の手汗で黒くなっても
読み返しているんだ
薬を飲んだ後は
このたとえようもない鬱蒼とした気分を晴らすべく
一杯のコーヒーを飲むのが
僕の習慣である
確かに
薬は音を苦じゃないものにしてくれたけど
おかげで失ったものは
多分もう、僕のところには
かえってこない
そんな気がするから
僕はコーヒーを飲むの
あ、もちろんブラックで。