乙女の川くだり
もっぷ

たゆたう春の輝きのなかにも
かの冬から
秋から
夏から続いてきた
いや 太古の昔より続いてきた
乙女の川くだり
老若問わずの乙女の川くだり
それは誰にも止められず
海を 目指す
女性だけの群れが
颯爽と流れてゆく
導くのは女子おなご
先頭に そして群れの後ろから
案内となって また追い風となって
くだってゆく乙女を見守っている
咲いた乙女 散った乙女
泣く乙女 何も知らない間にこの船に加わったまだあどけない乙女
みな 溌剌として
たとい涙零しているにしても それでも清々しいこころ懐き
前だけを 往きつく先だけを ひたすらに
ひたすらに

  そこの君
  そう そこの岸の少年よ みてはいけない
  すぐに立ち去り 部屋にこもりなさい
  この決意の集団を ってしまう前に
  すぐに立ち去り 部屋にこもりなさい

女子おなごの船頭が
現世のいのち無き 船頭が
威厳を持って 高らかに注意を送った




自由詩 乙女の川くだり Copyright もっぷ 2013-02-01 17:54:34
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