ありがとうの季節
梅昆布茶

きみから
ありがとうという言葉を聞いた事がなかった

すみませんという言葉しか出てこなかった
それは感謝の言葉ではないんだ

君からは何ももらわなかった無表情なその平凡な佇まいは
拒絶やそれを誤魔化す処世しか
それも身の痩せたまずしい心をおもわせた

与える喜びを知らないと
ありがとうという言葉が浮かんでこないのだろう

人の犠牲を貪って来たならば容易には出ないのだろう

ありがとうと言えるは人はやはり
血が通っていて暖かくて柔らかな風を感じる

そう
ありがとうは

ものに対する対価では無く

心に対する対価としての感謝

それは与えてみてはじめてわかる
人生のいちばん大切な語彙なのだ

人生の喜びは
貧富やステイタスにかかわらず
だいたいその辺に
集中しているさ

きみが本当に孤児だったかどうかはどうでもいいのだ

僕には興味のない事だ
嘘に嘘を重ねないで欲しいんだ

人から奪ったものは必ず誰かによって
ほとんどは自分によって
奪われるものだから

いっときの獲得を喜んではいけない
それを知るなら

大概の境遇は味わってゆける

それを忘れたからいま
そうなっているんだが




自由詩 ありがとうの季節 Copyright 梅昆布茶 2013-01-31 09:25:30
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