やさしいちえのわ
るるりら

なべなべそこぬけ
そこがぬけたら 
つながれた両手のうちのどちらかを
くぐる
ふたり一組になって遊ぶこともあれば
大人数で輪になって歌いながら
そこがぬけたら そこぬけに笑う
それが ちえのわ遊びだと信じていた

引っ越しをして 
ちえのわ遊びをする友達もいなくなって
父さんに「ちえのわ遊びして」ってせがむと
父さんは むずかしい顔をして翌日
たくさんの知恵の輪を持って帰ってきた

わたしがそこぬけのお唄を教えてあげたら
お父さんの体は びっくりするくらい大きくて
むちゃくちゃになって 困りながら笑ってたけど
毎週 なにか どこかで知恵の輪みたいなものをさがしてきた

「ほんとうは これが知恵の輪なんだよ」
なかには 父さん自作の知恵の輪もあったみたい
でも私ったら 見向きもしなかった
それには そこぬけさが 足りてなかったから
それより
むちゃくちゃに 無理のあった父さんとの
ちえのわ遊びは バカみたいに そこぬけな
素敵さだった

鉄くずでできた知恵の輪は 
この世の常識ってものの歪つさと だけど でもやっぱり
この世には やさしいさってものがあるってことを知る鍵だった

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初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0
タイトルは、ほかけさん


自由詩 やさしいちえのわ Copyright るるりら 2013-01-29 07:46:21縦
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るるりらの 即興ゴルゴンダ