幼さ
草野春心



  よく晴れた空の下
  十数羽の烏が女の体を
  生きたまま啄ばんでいた
  幼かったわたしは
  生家の二階の部屋で
  宿題をする手をそっと止めた
  本棚に置いたラジオから
  難しい古い音楽が響いていた
  隣家で犬が吠えていた
  女の体からちょうど
  右耳が剥がされたところだった
  しなやかな電線がかすかに揺れたので
  風が吹いているのがわかった





自由詩 幼さ Copyright 草野春心 2013-01-28 00:53:59
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