敗走業者
高原漣
路上に駐車する中型の窓に『敗走中』とある
ああ逃げているのね、フムンと見送る
崩れてゆく戦線に溶けていく
生命
(
いのち
)
、黄昏に沈む国
傾いた客船は船首から浸水し一気に沈む、折れる
つぎつぎと人は敗走する
そのもの蒼きシートを纏い河原の野に降り立つべし……
おお……言い伝えはまことじゃった……
感無量といったふうに老婆がすすり泣く。
用件を復唱しよう
『この世とおわかれする
時間指定はなさいますか?』
自由詩
敗走業者
Copyright
高原漣
2013-01-27 22:53:50