ポイントいりません(音声で表示されていく地図たちがひろがって)
モリマサ公

音声で表示されていく地図たち
がひろがって
信号待ちから
動き始めた列を追っかけて
くろくながくブレーキのながく
のびながら
するするまっすぐ
中央分離帯にむかってく痕をのみこんで
わたしたちを
のせたままなだらかに
はだかの並木が
くねくねカーブして
空気がすこし残ってるゆがんだアドバルーンを片隅にのせたまま
駐車場はかたむいている
目を見開いた状態でねむってる人間の顔みたいな気持ち悪さがつづいて
誰の住んでいるどこの街にでもあるファミレスのメニューみたく
近くて遠いのにどこまでもつるっとつながってて
覗いてる全員のその感覚がいま全部ここに
いまここになにもかも
超全部
つながっている
構造的な問題をふりかざす
きぐるみの通り魔が猛然とダッシュするストリート
全世界に共通するテロリスト
かれらを産み落とした親たち
が自分の子供の名前を検索する
わたし達が
実際なぜあのときあの子供を生んだのか
という気持ちにもいちどもどって考えてます
背中の液晶画面一杯に
一体何故?
とテロップがくっついて
ざわっとなる
一体何故こんなことが起きたのでしょうか?
アナウンサーの声がこだましている
たくさんのアパートとマンション
トラックが通過するたびに揺れている
四つ木のジャンクションでわたしたちは交差していく
時速と停止してるものの関係を俯瞰する
中川の対岸沿いの建物のかべたち
それぞれのいろあせかた
そこで働く人と暮らす人たちの
茶碗や食卓を並べて
それぞれの国の油や香辛料をかいで
橋たちがゆっくりとのびていく
時間というあふれるような流れ
その速度と浮力が
リアルなスピードにのってどんどん近づいてくる
首都高の看板のみどりいろ
しろくぬかれた小菅
の文字がはりついたその出口をでていくもやもやした笑顔たち
東京拘置所に吸い込まれていくかすみがかった輪郭
あれはわたしたちの家族?
それってもしかしてハッピーエンドですか?
なにここ?これは‥?未来?
衝撃!の文字とともに
宇宙人がつぎつぎと人質をとりはじめる
ブラウン管の中をうかんでいく体がどんどんUFOにすいこまれて
それぞれの言語のCMにはさまれながら
おにいちゃんが5分間隔で手を洗い
お父さんがお母さんの目をボールペンで刺そうとしてる
家は三軒先まで燃えてしまった

なんだろうこのつまさきの浮遊感
なんだろう

なんだろうこの失われていく感覚
なんだろう

いのりというのは
つたわり方によって
個体から液体そして気体へと変化したりはしないから
存在する
ということについて
今はもう考えたりしなくていいんだよ

愛っていうのは本当にいい
いろんな形があって
顕微鏡で細胞みるのと
シャトルの窓から砂漠みるのとが似てるみたく
質量をかえて輪郭をつなげて
分解されながら違う形になってつづいていく
ビビットで醒めないピースフルなメッセージが
それぞれの年代や言語で変換されて
度重なる家庭の事情がいっせいに草原の草のようにそよぎだし
吹いている風すら自分の責任?みたく思い込むこどもたちの群れが
光の中を走っている
そっかーこのことだったんだー
うでをのばしてばらばらに
逆光のなかに
飛びたっていく
孤独な太陽の下でどんな細い枝にも付着するパウダー
まじりけのない灰いろのスノー
わたしたちのまぶたがリアルに裏返りはじめる
高速で乱舞する蝶々
その記憶から
すべての羽をなぜか
無限にむしりとり
内側からあなだらけになり
輪郭だけは
すでに
急速にまっすぐに
落下していく


なんだろうこのつまさきの浮遊感
なんだろう



なんだろうこの失われていく感覚
なんだろう






 


自由詩 ポイントいりません(音声で表示されていく地図たちがひろがって) Copyright モリマサ公 2013-01-26 21:52:42
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