ウラ
nonya


あなたは
とても綺麗に微笑みながら
水のような滑らかさで話をつなぐ

わたしは
そんなあなたに見惚れながら
あなたの綻びを探してしまう

あなたは
笑っていないほうの目でわたしの
すべてを見透かしたような気になっている

わたしは
追い詰められた小動物の仕草で何も
分かるわけがないとほくそ笑んでいる

わずか0.02mmの角質層の下は
誰にも見えない
見えないから人は
憎んでしまったり
愛してしまったり
誤解したままだったり
リスペクトしまくったりする

心許ない薄皮一枚に包まれた
人のウラは
温かい闇と冷たい闇がせめぎ合っている
ましてや人のウラのウラは
得体の知れない臭いがするカオス

人のウラのウラは
決してオモテではない
いったん人のウラに迷い込んだら
もうオモテには戻れない
疑心暗鬼で開けるドアの向こうは
すべてウラだ

わたしのウラは
焼け野原に萎れかけた白百合が一輪だけど
あなたのウラは
青い湖面に白鳥が一羽浮かんでいるのだろうか
そんなことをぼんやり考えていたら

あなたは
物凄い笑顔をオモテに隆起させて
わたしに同意を求めてきた

わたしは
素直でないくせにとても小心者だから
話なんてろくに聞いていなかったくせに
オモテだけでこっくりと肯いて
オモテだけで起伏の少ない微笑を返した




自由詩 ウラ Copyright nonya 2013-01-26 17:12:28
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