選択肢
まーつん
道を歩いていて嫌になるのは
いつも いつも 枝分かれしていくこと
その中から ひとつを選ばなきゃならない
一番素敵な景色を見せてくれるのが
どの一本かも わからないのに
僕はそれに疲れて
道を外れて 野原に出た
そこには全てがあった
花が笑い 芝が色づき 獣が吠えていた
そして僕は時間を忘れた
面倒な選択は後回し 今はここで楽しもう
蜜を舐めて 草に寝転がり 狩りに手を染め
…春の野に遊ぶ鹿の群れ
矢をつがえた僕は
罪のない命の中から
肥えた一頭を探しつつ
弦を引き絞り 考える…
゛
生きていて一番難しいことは
多分 選ぶこと
全てを愛している人は 多分 何も選べないだろう
一つを抱きしめれば ほかの全てに別れを告げることになる
全てを憎んでいる人も 多分 何も選べやしない
一つを仕留めれば ほかの獲物をみんな逃がすことになる
限られた ものの見方や知識しか持たないのは
もしかしたら 祝福なのかもしれない
全てを見守り 導くなんて
神様に任せておけばいい
この世界は
でっかい銀の平皿に盛りつけられた
色とりどりの料理みたいなもの
僕一人ではとても 食べきれやしない ゛