雪道
Lucy

  
雪道を歩く
子どもの頃は
どんな雪道もすたすた歩けた
ふわふわの新雪が積もった道は
心躍らせ 雪を蹴散らし
わさわさ歩いた
湿った雪が積もった時は
足跡をくっきり残して歩いた
雪を踏んで字を書いたり
模様を描くことだってできた
氷点下の朝は
吐く息が白い繊維となって
マフラーにこびりつくのを見ながら
キュッキュッと鳴る雪の音を聞いて歩いた
解けかけた雪がまたつるつるに凍った朝は
ゴム長靴をわざと滑らせ
スケートのまねをした

友達とふざけたり
雪玉をぶつけあったりしながら
毛糸の手袋を濡らし
指先がかじかんで泣きそうになるまで
時間をかけて帰った雪道
家に帰ると祖母が洗面器にお湯を張り
かじかむ両手を浸けさせてくれた

雪道を歩く
晴れの日は白が乱反射して
足元が見えにくい
曇りの日は白に陰影が無く
もっと見えにくい
どこが滑るかわからないし
意外な凹凸に躓いてしまうかもしれない
そんなだから今は足元を見つめ
注意深く下ばかり見て歩く

でもふいに
空を見たくなる時がある
灰色の雲がひしめくだけとわかっていても
どうしても
呼ばれた気がして
足を止める

分厚い古い綿の布団を
大きなハサミで切ったように
雲に裂け目ができている
その切り口は曖昧にほつれ
発色の悪いうすぼんやりとした水色が
遠くを流れる川のように
細くまっすぐに続いていた


自由詩 雪道 Copyright Lucy 2013-01-25 11:11:00
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