役者志願
まーつん
この世界は
俺向きじゃない
ルールが飲み込めない
悲しくない時に泣いたり
嬉しくない時に笑ったり
そうして俺たちは関係を築いていく
当たり障りのない関係を
赤ん坊だけが自分に正直で
あとのみんなは役者志願
大根役者は嫌われる
舞台がスムーズに回らないから
俺は愛を知らないけど
知ってるふりをし続ける
俺は優しさを知らないけど
冷たいこの手を差し伸べる
胸の内にある籠に囚われた
喜びという名の鳥が
羽ばたき 騒いでいる
怒りという名の虎が
腹の奥へと続く洞穴を
のしのしと歩き 唸っている
悲しみは 萎えた白熊となって
眼窩の奥に広がる涙の海に浮かぶ
氷塊の上で 背中を見せて寝転がっている
感情という名の
自分に正直な動物たちが
行き場を失くして囚われている
この俺の内側に
相手に合わせて色を変えるカメレオンが
今の人々の在り方だ
それは保護色のように
わが身を景色に溶け込ませ
目立たせることをしない 警戒という名の感情
俺はカメレオンにはなれない
鳥のように囀り 虎のように唸り
萎えた白熊のように悲しみ そして舞台から蹴落とされる
学校で手渡された台本はなくした
だって本当に言いたいことは
心の内にしか 見つからない