【りんごの ゆくえ 】二編のオムニバス
るるりら



【すりおろした林檎】

ねこをかんぶくろにいれて ポンと蹴っていいような
汗と毒と 荒い呼吸の  みすぼらしい私が すっかり蒸発しました
ぬけがらの私の みぞおちを 
糖蜜が降りてゆきます

エリーマイラブ ソシ―と 叫べます
水泳選手が壁を蹴飛ばすみたいに
まっすぐに呼吸が伸びてゆきます
今までのわたしに さよなら


夕日は空に さようなら
空に わたしの息が白く浮かんで消えました

いままでのわたしに さようなら
いまのわたしは 
リンゴの匂いで 誇らしい




【空メールのやりとり】


空メールを送信すると
すりおろし林檎が きた
空メールを送信すると
おいしい おかゆのセットが きた
空メールを送信するとアイスノンをとりかえてくれた
空メールを送信すると
あたためられたタオルが きた
空メールを送信すると
あたらしいシーツにとりかえてくれた


窓をあけて
「もういいよ」というと
おふとんが 外に 干された

裏山を 散歩すると 
繭玉をみつけた
やさしい絹糸で 守られていたけれど
ちゃんと  孵化したんだなって
空に 

感謝した






【すりおろした林檎】 
初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0
タイトルは、小原 明季さん。

【空メールのやりとり】 同サイトに投稿-初出(2013/01/22(Tue)
タイトルは、かんなさん



自由詩 【りんごの ゆくえ 】二編のオムニバス Copyright るるりら 2013-01-23 09:52:08
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