病院にて
吉岡ペペロ



出張先で倒れた

会社のひとにわりと大きな病院に運んでもらった

その間にもお客様からクレームの電話が入っていた

その処理の指示を浅い息でおこなってそこへは明日行くことにした

問題が起こることは普通のことだ

どんな道を選択しようが問題は起こるのだ

こんな痛みのなかを歩いてくれたひとがいた

痛みをおして美術館や映画や散歩をしてくれたのだ

採血までソファでうたた寝をした

胃カメラは気持ち悪い嫌がらせのような検査だった

いまからCTだ

医者たちのサンダルや靴の音がしている

ものごとには原因があると考えるのは

理性的な思考ではないような気がした

ものごとをより深く理解しようとする心であるような気がした

人間は個体だ

個体であってひとりではない

個体は関係のなかでトラブルを起こし

個体そのものにも故障が生じたりする

いまさら法則なんて掴もうとは思わない

法則なんてない

法則とはものまねのようなものだ

この宇宙から生じている法則めいたものの

ものまねのようなものが法則と呼ばれているだけだ

CT検査の被曝量はどんなものだっただろう

会社から緊急の電話がありトイレでかけ直した

髭をはやした医者がこんなところで電話をするなと声を荒げた

このおっさんは物の言い方の大切さを教えにこんなところに来てくれたのだ

たぶんそうだ

この世界に深い意味があるとすればたぶんそういうことだ

病院に入って3時間以上たっていた

急患でいれてもらったから最後になるのだろう

私がいてもいなくても世界は回っている

晴れから雨に、平和から紛争に、好況から不況に

愛から無に、笑顔から泣き声に、ぐるぐるぐるぐる回っている

そしてぐるぐる回るたびに法則めいたものが生じて

誰かが何処かで後だしジャンケンをしながら私の名前をさん付けで呼んでいる


携帯写真+詩 病院にて Copyright 吉岡ペペロ 2013-01-21 15:58:02
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