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木屋 亞万


勝ち負けだけで決まることのほうが少ない
省みられる過去に絡みつく
勝敗のフェンスを潜り抜けて
思い出は形を損なわず光を放射する

勝ち負けを判断するのは誰か
私か君か親か世間かそれとも時間か
範囲や基準が広がるほどに
薄い膜のような重みは増していくけれど

息つく暇も無い
行き着く先も無い
引き取った息がすぐに産声に転生する
慌しさに汚染されていく日々

いつ勝負が終わるのか
何を胸に抱くべきなのか
どこを目指していけばいいのか
わからないことばかりだ

何もかもに背を向けて
しゃがみこみたくなる
やめたい
負けそうになる
すんでの所で踏ん張って
背筋を伸ばして立とうと思う

冬でも幹だけは立つ落葉樹を背に
風に頬を打たれながら
寒さに足を震わせながらも
脅かされることのない眠りが
私をつつむその時まで

戦おうじゃないか
誰に勝つわけでもなく
何に負けるわけでもない
だらだらとしがみつく日々だ

歯茎を風がすり抜けて
いつか春で口を漱ぐさ


自由詩 スピンアトップ Copyright 木屋 亞万 2013-01-21 00:38:21
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