苺の実
草野春心



  遅い昼食を済ませて  
  苺の実を一つ齧る



  幾つもの
  目には見えない高い壁が
  頭のなかに聳え立ち
  増えたり減ったりしている
  煙草を一本吸う



  むずかしいことに興味はなかった
  風が吹く
  昼の光の白さが一粒
  また一粒、
  どこかに吸いこまれてゆく



  むずかしいことに興味はなかった
  苺の実を一つ齧る
  それから、ぎゅっと目を伏せて
  けして目には見えない
  激しい波が終わるのを待つ





自由詩 苺の実 Copyright 草野春心 2013-01-20 20:58:17
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