きみを忘れやしない
石田とわ



     つぶれたスーパーの裏には
     ひとり郵便ポストが立っている
     その赤いからだは色褪せて
     ところどころが剥げている
     スーパーとともに忘れられ
     それでもそこにあり続け
     待つことしかできぬ動けぬ身
     通りすがりのだれかが
     遠くのだれかに宛てた手紙を
     入れてくれる日を夢みているのだろう    
     思いを伝える手紙を待っている
     集配係のおじさんが
     どうせ手紙などありゃしないと
     忘れたふりをしてしまうだろう
     手紙を書こう
     ありがとうの一言を
     人通りのすくない裏通りでは今日も
     色褪せた郵便ポストがひとり
     立っている














自由詩 きみを忘れやしない Copyright 石田とわ 2013-01-20 15:56:04
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