豆乳いろ
まきしむ
『豆乳いろ』
� はじまり(道)
一月の晴れた朝
来なければよかったなあ
凍りついた道に蒸気
植物みたいな街灯がにょきにょき連なって
私、しゃがんだりたったりしながら
小さな男の子がこっちにきたりあっちに行ったり
うろうろするのをながめてた
にぎったじょうろがきらっとし
ポケットの中のお菓子のかおりが
鼻腔にまだ残っていて
ぶらさがった手足が
もういらなくなったのかなあ
� 逃避(土手)
何かしていなくてはいけないのか
でっかい雲が流れている
その端にすがって
隣国まで飛んでゆきたい
それは無理だから
猫を盗んで飼う
� 反抗期(波止場)
コンクリートを打ち砕いて
頭にかぶったら
海藻のにおい
おなかが痛くてどうしようもなくなった
波に揺られる中ポップコーンが右胸で破裂している
ワイワイと楽しそうだ
僕もまぜてほしい
抱きしめてやりたい
�思春期(海の中)
なつかしい感じが徐々に消えていく
わたしのことが磨り減っていく
うつろな体だけになって
溶け合ってしまえば
叶ったかのように
手を合わせて
目を閉じ
眠る
�(宇宙)
一角で
こおろぎと談判
近くで見るとほんとすごいね
ぼく、冷蔵庫の下から逃が
してやった
でもこおろぎはどうでも
よかったんだって
死んでもしななくても
あんまり変わらないから
マヨネーズにあすぱらがすつけて
たべてたかったんだってさ
ぼく感心しちゃった
�おしまい
起きた
足がまだ動く
水が体内を廻っている
なんて単純なんだろうか、
嫌んなる繰り返し
ビデオカメラとノートを持って
コンビニでお茶を買おう
公園に行って
アヒル撮ろうね