白と水(Private Nocturnal)
木立 悟





じりじりと国が焼け
冬は飛び立ち
うなじをうなじに見下ろしている


午後の蛾の羽
雪と咽の下
噛めば透り
放せば 海となる


誰かのこだま
左の痛み
光と光
陽と灯の居場所
分子と空の
わずかな差異


冬に冬を乗せ
安心している
あなた以外の
すべてのあなた


土の音が一巡したら
星は近づいてくるかもしれない
誰もいない家を今度こそ
照らしてくれるのかもしれない


午後の外が紅いので
すべてがすべてにはばたいているのだと知る
のがれようもない苦さ
苦さ


冬は常にふたつ笑み
ひとつを選ぶことさえ出来ず
くりかえしくりかえし出来ぬまま
今もまたなお
くりかえしている


記号の塵が立ち上がり
足跡のない路をゆく
到き到かぬ曇のはざまに
むらさきをむらさきを招びながら


午後の鴉
鉄が土に落ちる音
蛾の目に羽に覚めつづけ
空をすぎる水を聴く


ひとつとふたつの境いめを蹴り
冬は孵り 川に映らず
動かぬ腕から生えた手を
動かぬままに祝福してゆく


































自由詩 白と水(Private Nocturnal) Copyright 木立 悟 2013-01-17 23:33:50
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