西郷どんは今日も往く
服部 剛
江戸の町を外れた木々の緑の林道を
刀一本脇に差し
首輪を繋いだ愛犬つれて
悠々と風を切り
西郷どんは、ずんずん歩み往く
勝海舟の願いを聞いて
江戸の戦火を避けた西郷どん
明治新政府の役には就かず
愛する薩摩に帰った西郷どん
ふたたび政府に呼ばれたが
亜細亜に対する政策が嫌で
やっぱり薩摩に戻った西郷どん
嘗て武士だった者達と苦しみを分け合い
五十年の生涯を自ら閉じた、西郷どんは
百年以上時の流れた
平成二十五年の銀座・文藝春秋画廊にて
ふらりと訪れた青年の僕が
カウンターに座り熱燗を飲みつつ
眺めた額縁の中で
今日も緑の風を切り
何処までもずんずん、歩み往く
林道の遥かな出口に
ひかり溢れる
日本の曙を目指して